システムエンジニアの仕事で 猪飼智弘 2017/11/23 サラリーマン体験談 男性35歳IT業 私は30代半ばで独立するまで、属にいうサラリーマンエンジニアをしていました。 もちろん入社時はシステムエンジニアではなく、プログラマーとして採用されたのですが。 そんな私のサラリーマン時代の苦労話と言えば、消火活動に尽きると思います。 消火活動といっても本当に火を消す仕事ではありません。 くすぶる人間関係が火を放ち、そして燃え尽きないようにするため、それらを宥める意味での消化活動です。 もちろん私もこんな役目をするとは思ってもいませんでした。 しかし時代が私にそれを求めたのです。 私が勤めている業界、つまりIT関係の仕事はここに20年で大きく発展しました。 業界の外にいる人なら、それを羨ましいと思う人もいるでしょう。 ですがその急な発展は、それと同時に技術や環境も大きく変化させたのです。 私が勤めていた10年近くの間にも、会社で用いていたプログラミング言語や開発環境は何度か変わりました。 その流れに乗れず、別の会社に転職した方も多くいます。 そしてその大きな変化が、厄介極まりない状態を生みだしたのです。 私が勤めた会社は、私が入社する少し前に設立されたのですが、入社当初からそこには大手から引き抜かれた技術者や、今で言うシステムエンジニアに近い仕事をする方がそれなりにいらっしゃいました。 入った時はまだ波は緩やかで、お酒の席で彼らの技術や思考、経験談を聞くのは本当に楽しかったです。 でも時代の変化がその一部を意味のないものにしてしまいました。 古くからいる先輩の中にも新しい技術をしっかりと学び、対応した方もいます。 でもそうでない人もそれなりにいたのです。 内部にそのような歪みが発生していたにもかかわらず、次々と入ってくる新入社員。 しかも彼らは私達が取り入れようとしている技術を、学生時代にそれなりに習得しているのです。 問題が起きないわけがありません。 多くの業界では時間は経験となり、勤務年数を重ねるほど新入社員との間に能力の面で大きな隔たりを生みます。 ですが私のいた場所では、それが大きく狂っていました。 確かに新入社員の持つ新しい技術や知識は、学ぶことをやめた古株の方に比べると優れていて、それを用いた方が仕事の効率が上がるのは事実です。 しかし、プロジェクトの成功条件として考えるとそれだけではなく、交渉や相手方の意向を読み取る力、しっかりとした計画を立てる力など経験を重ねたからこそ持てる能力も必要になります。 前者は若い社員が主に持ち、後者は上司含むベテラン社員が持っていました。 そしてどちらにも対応できた者達が、その挟間の橋になるしかなかったのです。今思い出しても胃がしくしくと痛みます。 新しい技術や知識を持っている若い人から見れば、上が持ってきた仕事やその環境は古臭く、無駄が多く感じられるのは当然です。 「上司を追い出せ」、「代わりのリーダーになってください」、「こちらの環境が優れています。 「上の考えを変えてください」、「あっちの会社の方が革新的でした」などいろんな注文を受け、愚痴も聞きました。 中には要望書として上に提出したこともあります。 また経験を積んできたベテランの人が、変化の必要のないところで無駄にリスクを抱えるより、安定したものを導入したほうが取引先の信頼に応えることになると考えるのも頷けるのです。 こちらでも、「あいつは使えない」、「自分の思考に捕らわれ、会社のことを考えなさすぎる」、「挑戦と無謀を履き違えている」など様々な愚痴を聞かされ、そして彼らの先輩として怒鳴られ、機嫌を取るように何度も相槌を打ち、頭を下げました。 会議中に両者がぶつかった際には、2組に分けて別の店に飲みに誘ったり、連れて行ったりしたこともあります。 多くの人はコウモリ野郎と思われるかもしれません。 ですが、人間関係が崩壊した職場で仕事をするよりもはるかにましです。 あれは肉体だけじゃなく、精神的にも多大なダメージを受けてしまいます。 30代手前でシステムエンジニアにキャリアアップしてから、その苦労は一段と増しました。 独立するまでの4年間は本当に辛く、身体を壊さなかった自分を褒めてやりたいぐらいです。 IT業界は急成長を遂げ、外から見れば勝ち組に見えるかも知れません。 ですがその中ではそれなりに歪みが生じ、苦労している人も多いのです。 中間管理職の辛さ 職場の良し悪しは上司次第
IT業
私は30代半ばで独立するまで、属にいうサラリーマンエンジニアをしていました。
もちろん入社時はシステムエンジニアではなく、プログラマーとして採用されたのですが。
そんな私のサラリーマン時代の苦労話と言えば、消火活動に尽きると思います。
消火活動といっても本当に火を消す仕事ではありません。
くすぶる人間関係が火を放ち、そして燃え尽きないようにするため、それらを宥める意味での消化活動です。
もちろん私もこんな役目をするとは思ってもいませんでした。
しかし時代が私にそれを求めたのです。
私が勤めている業界、つまりIT関係の仕事はここに20年で大きく発展しました。
業界の外にいる人なら、それを羨ましいと思う人もいるでしょう。
ですがその急な発展は、それと同時に技術や環境も大きく変化させたのです。
私が勤めていた10年近くの間にも、会社で用いていたプログラミング言語や開発環境は何度か変わりました。
その流れに乗れず、別の会社に転職した方も多くいます。
そしてその大きな変化が、厄介極まりない状態を生みだしたのです。
私が勤めた会社は、私が入社する少し前に設立されたのですが、入社当初からそこには大手から引き抜かれた技術者や、今で言うシステムエンジニアに近い仕事をする方がそれなりにいらっしゃいました。
入った時はまだ波は緩やかで、お酒の席で彼らの技術や思考、経験談を聞くのは本当に楽しかったです。
でも時代の変化がその一部を意味のないものにしてしまいました。
古くからいる先輩の中にも新しい技術をしっかりと学び、対応した方もいます。
でもそうでない人もそれなりにいたのです。
内部にそのような歪みが発生していたにもかかわらず、次々と入ってくる新入社員。
しかも彼らは私達が取り入れようとしている技術を、学生時代にそれなりに習得しているのです。
問題が起きないわけがありません。
多くの業界では時間は経験となり、勤務年数を重ねるほど新入社員との間に能力の面で大きな隔たりを生みます。
ですが私のいた場所では、それが大きく狂っていました。
確かに新入社員の持つ新しい技術や知識は、学ぶことをやめた古株の方に比べると優れていて、それを用いた方が仕事の効率が上がるのは事実です。
しかし、プロジェクトの成功条件として考えるとそれだけではなく、交渉や相手方の意向を読み取る力、しっかりとした計画を立てる力など経験を重ねたからこそ持てる能力も必要になります。
前者は若い社員が主に持ち、後者は上司含むベテラン社員が持っていました。
そしてどちらにも対応できた者達が、その挟間の橋になるしかなかったのです。今思い出しても胃がしくしくと痛みます。
新しい技術や知識を持っている若い人から見れば、上が持ってきた仕事やその環境は古臭く、無駄が多く感じられるのは当然です。
「上司を追い出せ」、「代わりのリーダーになってください」、「こちらの環境が優れています。
「上の考えを変えてください」、「あっちの会社の方が革新的でした」などいろんな注文を受け、愚痴も聞きました。
中には要望書として上に提出したこともあります。
また経験を積んできたベテランの人が、変化の必要のないところで無駄にリスクを抱えるより、安定したものを導入したほうが取引先の信頼に応えることになると考えるのも頷けるのです。
こちらでも、「あいつは使えない」、「自分の思考に捕らわれ、会社のことを考えなさすぎる」、「挑戦と無謀を履き違えている」など様々な愚痴を聞かされ、そして彼らの先輩として怒鳴られ、機嫌を取るように何度も相槌を打ち、頭を下げました。
会議中に両者がぶつかった際には、2組に分けて別の店に飲みに誘ったり、連れて行ったりしたこともあります。
多くの人はコウモリ野郎と思われるかもしれません。
ですが、人間関係が崩壊した職場で仕事をするよりもはるかにましです。
あれは肉体だけじゃなく、精神的にも多大なダメージを受けてしまいます。
30代手前でシステムエンジニアにキャリアアップしてから、その苦労は一段と増しました。
独立するまでの4年間は本当に辛く、身体を壊さなかった自分を褒めてやりたいぐらいです。
IT業界は急成長を遂げ、外から見れば勝ち組に見えるかも知れません。
ですがその中ではそれなりに歪みが生じ、苦労している人も多いのです。